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公正証書遺言の手数料が令和7年10月に変更 ~必要書類も紹介~

 自分が亡くなったときに財産の引継ぎ先を決めておこうと、遺言を作るに当たり、

確実性が高い公正証書遺言を使うことを希望することが考えられます。

 しかし、費用がいくらぐらいかかるのか、どのような書類が必要になるのか、

不安に感じられる方もおられるかもしれません。


 そこで、公証役場の公証人に支払う手数料がどのように算出されるのか、

提出を求められる書類にはどんなものがあるか、お伝えいたします。

 特に手数料については、物価高などを考慮して、

令和7月10月から変更されているので、ご注意願います。



 まず、公証人手数料についてですが、1回何円の定額制でもなく、

単純に総財産の金額に比例するわけでもありません。


 公正証書遺言の手数料は、次の順序に従って計算されます。

① 作成する遺言の内容により、財産を受け取る人が誰であって、

 受け取る人ごとに、受け取ることになる財産を金額で計算します。

② その金額に応じて、下で紹介する表に従い、

 段階的に定められた手数料を導き出します。

③ 各々の手数料を全員分足し上げます。

④ 祭祀主宰者の指定がある場合は、13,000円を加算します。

  ここまでが「基本手数料」になります。

⑤ 遺言の対象となる財産の総額が1億円以下の場合は、

 「遺言加算」13,000円を加算します。

⑥ 紙に出力するとして、枚数が3枚を超える場合には、

 超える1枚ごとに300円を加算します。

⑦ さらに、公正証書の正本と謄本を発行する手数料も加わります。

  書面(紙)で受け取る場合、用紙代が1枚当たり300円になります。


 こうした手数料については、遺言に限らず全般的に、

令和7年9月まで長らく変わらなかったのですが、この10月に変更されました。

 日本公証人連合会がこの変更をホームページで紹介しています。 → リンク

下の画像は、その中で変更後の公正証書作成手数料を説明している表になります。


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 実は、50万円以下の区分は新たに設けられ、そこは値下がりしたのですが、

200万円を超える部分は、軒並み値上がりとなっています。

総額が1億円以下の場合に加算する額も、以前の11,000円から上がりました。


 現在の手数料をどう算出するのか、具体例を示してみます。

① 長男に総額6千万円、二男に総額2千万円、長女に50万円を相続させる内容で、

 紙にすると6枚分の遺言

② 長男:49,000円、二男:26,000円、長女:3,000円

③ 3人分の合計が、78,000円

⑤ 財産の総額が8,050万円で1億円以下 → 13,000円を加算

⑥ 紙にすると3枚超 → 300円×(6-3)= 900円を加算

⑦ 正本と謄本を書面で受取り → 300円×6×2= 3,600円

 ③⑤⑥⑦を合計した 95,500円が、手数料の総額になります。


 公証役場で作成する場合、公証人に支払う手数料は以上で構わないのですが、

病院や施設などに公証人が出張で来てもらう場合は、さらに手数料が必要になります。

 詳しくは、このブログの以前の記事をご覧ください。 → リンク


 また、公証人に支払う手数料以外にも、必要書類を入手するため費用がかかります。

 行政書士などの専門家に支援を依頼すれば、専門家に支払う報酬も必要になります。

 このほか、証人2名に対して日当を支払う場合もあるでしょう。



 ここからは、公証人に提出する必要書類を取り上げます。

 事前に打ち合わせをする段階で、次の書類を公証人に提出する必要があります。


〇 遺言者本人確認用 … 以下のうちどれか

 印鑑証明書(正式名は印鑑登録証明書、発行から3カ月以内)と実印(遺言作成時)

 運転免許証、マイナンバーカード、住民基本台帳カード(写真付き)

 パスポート、身体障害者手帳、在留カード


〇 関係者を示す書類

 遺言者と相続人との続柄や生年月日がわかる戸籍謄本

 受遺者(相続人以外に遺言で財産を受ける人)がいる場合、

  その人の住民票(または住所・氏名・生年月日がわかるもの)

 遺言執行者(遺言の内容を実現する人)を相続人らとは別に指定する場合、

  その人の住所・氏名・生年月日・職業がわかる住民票やメモなど

 証人2名の住所・氏名・生年月日・職業がわかる運転免許証のコピーやメモなど


不動産関係

 固定資産税納税通知書一式(または固定資産評価証明書)… 市町村で発行

 登記簿謄本(現在の呼び名は登記事項証明書)… 法務局で発行


〇 他の財産関係 

 預貯金については、通帳やそのコピー

 (金融機関・支店・種類・口座番号や残高を記したメモで対応できる場合もある)

 有価証券については、取引残高報告書など(同じくメモで対応できる場合もある)

 その他の財産については、内容がわかる資料やメモ書き


 こうして提出を受けた書類によって、公証人は確実な内容を遺言にすることができ、

不動産なら登記に記載されたとおりの表示がなされます。

 また、手数料計算するためにも、財産関係の書類が使われ、

預貯金などの金融資産は、提示された残高によることになります。

 不動産の場合、固定資産税の評価額が基準になり、

通常はそのままで計算されますが、場合によっては何割か増しになるかもしれません。

 なお、納税通知書の一式が使えるのは、評価額が記載された箇所があるからです。


 本人確認書類として、以前は、印鑑証明書が必須だと説明されていました。

 しかし、今後は、公正証書の作成手続のデジタル化により、

署名と実印の押印に替わって、「電子サイン」(電子署名)が利用されるため、

ほかの本人確認方法によることが可能になります。

 公正証書の作成手続のデジタル化は、令和7年10月から順次始められ、

今年中に完了が予定されています。


 以上のとおり必要書類を説明しましたが、

作成する遺言の内容や相続人らとの関係によっては、

公証人から追加で書類を提出するよう指示される可能性はあります。

 手数料が実際にいくらになるかも含めて、

個別具体的に公証人へ確認することをお勧めします。


 また、公正証書遺言を作成する全体の流れについては、

このブログの以前の記事を参考にしてください。 → リンク


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