戸籍の振り仮名制度、令和7年5月開始 ~変更なら振込口座も注意~
- 真本 就平
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行政書士の仕事をしていると、戸籍を目にする機会が多くあります。
相続手続きにおいては、相続関係を証明する書類として、
亡くなった方や各相続人の戸籍謄本を収集することがあります。
ときには、許認可の関係で、戸籍を役所へ代理で提出する場合もあります。
このような戸籍について、令和5年に法律の改正が行われており、
本日、令和7年5月26日から、氏名の振り仮名制度の取組みが始まります。
この取組みは、日本国民全員に関わりがあり、戸籍にしっかり記載されるもので、
法務省がホームページで紹介しています。 → リンク
下の画像は、紹介している主な内容になります。

多くの方の氏名は漢字で表記されていますが、「辺」に「邊」「邉」などが、
「斉」に「斎」「齋」などがあるように、漢字には字体が異なるものがあったり、
実は私の「真」もそうなのですが、戸籍上は標準的ではない「外字」が使われたりして、
データベース化するに当たって作業が複雑になり、検索に時間を要していました。
一方で、例えば「新谷」のように、同じ漢字でもいくつもの読み方が存在したり、
「山崎」の「ヤマサキ」「ヤマザキ」のように、濁るかどうかの違いがあるため、
本人を確認する情報として、振り仮名を勝手に推測してしまうのは問題でした。
そこで、戸籍に氏名の振り仮名をきちんと掲載することによって、
データベースで検索するなどの処理がしやすくなり、
行政分野のデジタル化を推進するための基盤整備に役立たせようとしています。
また、振り仮名が住民票の写しやマイナンバーカードにも記載されるようになり、
本人確認資料として用いる場面が多くなります。このことは、複数の振り仮名を使って
別人を装うような事態を防ぐことにもつながります。
では、振り仮名の記載に向けて、どのような取組みがされるのでしょうか。
突然に記載が始まるのではなく、国民本人に対して記載予定の振り仮名を
認識する機会が1年間確保されます。具体的には、令和7年5月26日以降、
役所からはがきで通知されますので、正しい振り仮名かどうか確認することになります。
戸籍のことなので、住所地がある市区町村ではなく、本籍地の市区町村から届きます。
京都市ではホームページで、令和7年7月中旬以降、順次送付する予定と
案内されています。届け先は、住民票上の住所あてになります。
通知される内容は、下の画像のようなものになります。

この通知書は、戸籍単位で送られる予定で、同じ戸籍で同居している人の分が
まとめて記載されます。別の住所に住んでいる人がいる場合、住所地ごとに届きます。
なお、通知書に記載される振り仮名は、市区町村が住民票に関する事務処理を
実施するに当たって使用する情報に基づくと考えられます。
届いた振り仮名が正しければ良いのですが、実際の振り仮名と異なる場合は、
令和8年5月25日までに、必ず正しい振り仮名を市区町村に届け出てください。
もしも届出がされなかった場合、令和8年5月26日以降に、
通知書に記載された振り仮名がそのまま戸籍に記載されてしまいます。
なお、通知書の振り仮名が正しい場合でも、早く戸籍に振り仮名が
記載されるのを希望される場合は、届出をすることができます。
この振り仮名の届出は、氏(名字)については戸籍の筆頭者が単独で、
名(下の名前)についてはそれぞれの人が、届出をする人になります。
戸籍の筆頭者が除籍されている場合は、その配偶者(夫や妻)が、
その人も除籍されている場合は、その子が氏の振り仮名の届出人になります。
未成年者の届出は、親権者が届出をすることになります。
届出の方法は、マイナポータルからオンラインで行うことができます。
この場合、マイナンバーカードとその電子証明が必要になります。
もちろん、届書を市区町村へ郵送したり、窓口へ提出することもできます。
また、どの方法にせよ、届出に手数料はかかりません。
この振り仮名制度では、「ヴ」や「ー」を含んだカタカナが使われます。
また、「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているもの」
に限られるルールがあり、いわゆるキラキラネームの使用がある程度制限されます。
例えば、次のような読み方は認められません。
・漢字の意味や読み方との関連性をおよそ又は全く認めることができない読み方
(「太郎」をジョージ、マイケル)
・漢字に対応するものに加え、これと明らかに異なる別の単語を付加し、
漢字との関連性をおよそ又は全く認めることができない読み方を含む読み方
(「健」をケンイチロウ、ケンサマ)
・漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方(「高」をヒクシ)
・漢字の持つ意味や読み方からすると、別人と誤解されたり
読み違い(書き違い)と誤解されたりする読み方(「太郎」をジロウ)
・差別的、卑わい、反社会的な読み方
これに対して、漢字の読みの一部が入る場合や漢字同士に関連性がある場合、
実質的に読まない「置き字」を含む場合は認められると説明されています。
ただし、すでに一般に認められる読み方以外の読み方を現に使っている場合には、
これを尊重して、一定の場合に氏名の振り仮名とみなすことが認められます。
この場合、届出に合わせて、読み方が通用していることを証する書面、
例えばパスポートや預貯金通帳などを提出しなければなりません。
これから生まれる子については、出生届に記載した名の振り仮名が
戸籍に記載されます。上に挙げた読み方のルールも適用されます。
外国人が日本に帰化して、戸籍を編製するときも、氏名の振り仮名を届け出ます。
そして、届出をした後に振り仮名を変更するには、家庭裁判所の許可を得てから、
市区町村に提出しなければなりません。氏についてはやむを得ない事由、
名については正当な事由が必要とされます。
なお、制度開始から1年の間に振り仮名の届出が無かったことで、振り仮名が
戸籍に記載された場合には、1度に限り、家庭裁判所の許可は不要にはなります。
さて、戸籍を対象にした氏名の振り仮名の情報は、市区町村によって、
住民票に連携されます。そのため、今後、発行される住民票の写しには、
氏名の振り仮名が記載されるようになります。
マイナンバーカードには、令和8年夏以降に振り仮名が記載される予定です。
さらに、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を通して、
年金機構にも情報が共有されて、公的年金の給付にも利用されます。
しかし、銀行などの預貯金口座の名義やパスポートの氏名については、
戸籍の振り仮名が変更されても、自動的に切り替わるわけではありません。
そのため、老齢年金や役所の給付金などが振り込まれる預貯金口座については、
銀行などの金融機関に対し、振り仮名を対象とした名義変更の手続きをしておかないと、
支払い手続きがうまくいかず、問い合わせを受けるなど手間取ることが予想されます。
パスポートについても、都道府県などの旅券事務所などに対して、
記載事項変更の手続きが必要になります。(マイナポータルを使う方法もあります。)
最後に、戸籍とは別ですが、氏名の振り仮名が関わる手続きが最近できました。
不動産登記における検索用情報の申出で、令和7年4月21日に始まっています。
これは、令和8年4月から法務局で所有者の住基ネットの情報を検索するできるよう、
不動産の個人所有者が、次に挙げる「検索用情報」を法務局に申し出る制度です。
・氏名 ・氏名の振り仮名
・住所 ・生年月日
・メールアドレス(持っていない場合は、申出不要)
もっとも、不動産登記簿謄本(登記事項証明書)には、
これまでどおり漢字の氏名や住所のみ記載され、振り仮名までは載りません。
詳しくは、法務局や司法書士にご確認ください。