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令和11年にはデジタル遺言の自作が可能に ~法務局への口述が必要~

執筆者の写真: 真本 就平
真本 就平
9月25日
読了時間: 5分

 令和8年の前半、遺言に関する民法の改正が話題になり、

6月には実際に改正することが国会で決まりました。

 このうち、電磁的記録(デジタルデータ)によって

作成された遺言に効力を認める「保管証書遺言」の制度は、

3年後の令和11年の前半に開始される見込みですが、

現時点でわかっていることをお伝えいたします。


 今回の民法改正については、同時に改正がされた様々な内容とともに、

法務省がホームページで紹介しています。 → リンク

 下の画像は、そのうち保管証書遺言を主に説明している部分になります。



 まず、公証役場を利用する場合以外、遺言に自筆が必要である状況が、

デジタルデータに何でも置き換わるわけではありません。

 遺言の内容が記録されたデータ類の保管を法務局に申請して、

本人が遺言全文の口述などをしてから、法務局が遺言を保管する方式が

新しく作られて、これが「保管証書遺言」と名付けられます。


 保管証書遺言の場合、遺言を作成するに当たって、

パソコンやスマートフォンなどで作った電磁的記録(デジタルデータ)で

残すことが可能になります。また、全文の自署は不要ですので、

例えば、ワープロソフトを使ったキーボード入力や音声入力が可能になり、

自筆で作る場合に比べて、修正(書き直し)が極めて容易になります。

 遺言の全文と氏名を記録することが必要ですが、

日付の記載は要件にはされていません。

 あるいは、ワープロソフトのデータを印刷するなどして、

書面の形で作成することも可能です。


 こうして作成したデジタルの記録には、電子署名を施すこととされ、

マイナンバーカードやマイナアプリを利用することなどが想定されます。

 書面の場合は、印刷紙面に署名をすることになりますが、

押印までは不要になりそうです。

 この辺りは法律上、証書(作成した書面やデータ)に

署名またはこれに代わる措置を講ずると、記されています。

 署名に代わる措置や作成方法などの細かい点は、まだ決まっていません。


 そして、法務局へ申請する必要があり、本人確認を受けます。

遺言者は顔写真付き身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)を

提出することになりそうです。

 さらに、「口述」が求められます。これは、遺言者が法務局の職員の前で、

証書に記録された遺言の全文を読み上げることであり、

遺言が本人の真意に基づくものであることを担保するためと説明されています。


 ただし、遺言のうち財産目録の部分は、職員が目録を画面で見せるなどして、

遺言者に閲覧させる措置により、財産目録の口述を不要にすることができます。

 また、発話が不自由な方は、通訳人の通訳または自書に替えることが可能です。

 こうした手続きを経て、法務局で遺言書保管ファイルに記録がなされて、

保管証書遺言が初めて有効になります。


 しかも、保管の申請をオンラインで行う方法が、用意される見込みです。

 また、申請人からの申出があり、法務局側がその申出を「相当と認める」とき、

映像と音声の送受信(ウェブ会議)による手続が可能となります。

 こうした方法を利用できれば、法務局へ出向かずに

自宅や施設などから手続が完結できることが期待されます。

 もっとも、無理やり書かせようとする親族など、不当な干渉者が

存在してはいけません。そこで、ウェブ会議を実施するに当たって、

周囲に介助者以外の他人がいないかを確認することや、

不当な干渉が疑われる場合、ウェブ会議を中止する運用が想定されます。


 そして、遺言者が亡くなった後は、家庭裁判所での検認は必要ありません。

 一方、相続人や受遺者(遺言で財産を受け取れる人)、遺言執行者が、

遺言の情報が記録された証明書の交付を法務局へ請求して、

交付を受けた証明書などを手続きに使用することになります。

 また、相続人などが証明書の交付を受けた場合などには、

他の相続人へ遺言を保管していることが通知されます。

 そのほか、遺言者が保管の手続きの際に希望すれば、

法務局が遺言者の死亡の事実を確認できたときに、

予め指定しておいた人に対して、通知を届けるようにすることも可能です。


 ここまで説明すると、令和2年に始まった自筆証書遺言の保管制度と

似ていると感じ取られる方も多いと思います。

 この保管制度について取り上げた過去のブログはこちらです。 → リンク

 そこで、この自筆証書遺言の保管制度と新しくできる保管証書遺言との

主な相違点を以下にまとめてみます。


・作成方法

  自筆の保管制度:全文自書、余白などの様式が厳格

  新保管証書遺言:デジタル可能、比較的自由に作成

・日付記載

  自筆の保管制度:必要

  新保管証書遺言:不要

・申請時の手続き

  自筆の保管制度:本人が提出

  新保管証書遺言:本人が口述、本人確認が厳格

・オンライン申請・ウェブ会議は、どちらも可能になる予定

・保管・検認・相続人らの手続きは、どちらも基本的に一緒


 もっとも、法務局へ支払う手数料がいくらになるか、

ウェブ会議による方式がどのような場合に認められるかなど、

保管証書遺言の運用に関する事柄が、現時点ではまだ決まっていません。

 便利さや他の制度との比較を判断するには、開始まで待つ必要がありそうです。



 さて、今回の遺言関係の民法改正では、ほかにも変更される事項があります。

そのうちいくつかについても、少し触れておきます。


 1つは、自筆の遺言に必要だった押印が、任意になることです。

本文・財産目録・訂正に、押印は必須ではなくなります。

 もっとも、押印が無いことで、本当に本人が書いたのかどうか、

親族の間で疑念が生じてしまい、遺言無効の主張をめぐって

裁判になることなどが起きやすくなる心配もあります。


 また、公正証書遺言では2名が必須になる証人について、

相続人や受遺者(遺言で財産を受け取れる人)などはなれませんが、

受遺者(推定相続人である者を除く)の被用者と、

受遺者が法人の場合は、その被用者及び役員が、

証人になれない人に追加されます。


 以上の2点の改正は、来年(令和9年)6月には実施される見込みです。

 もっとも、改正実施前に作成された遺言は対象外になります。

 遺言に関する法改正について疑問が生じれば、専門家への相談をお勧めします。


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