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公正証書遺言作成はデジタル化済み ~リモート方式などは難しい現状~

執筆者の写真: 真本 就平
真本 就平
6月12日
読了時間: 5分

 自分が亡くなった後、自分の考えに従って財産を引き継がせるために、

遺言を作成することは有効な方法であるところ、引継ぎを確実にするため、

公証人が関与する公正証書遺言を選ぶ人も多くおられることでしょう。


 この公正証書遺言を作成するに当たり、従来は紙面が使われていましたが、

昨年(令和7年)10月から12月にかけて、デジタル化が実施されました。

 今回のブログでは、この概要をお伝えします。



 法律の施行は令和7年10月1日でしたが、体制が整った公証役場から

デジタル化が導入されていきました。そして、その年の12月のうちに、

全国の公証役場で対応が可能になりました。


 これにより、公正証書原本が、書面すなわち紙の文書ではなく、

原則として電子データ(電磁的記録)で作成され、保管されます。

 さらに、公正証書の正本・謄本について、書面の発行・交付だけでなく、

電子データにより発行・交付を受けることもできるようになりました。

 もっとも、添付資料をPDF化できないなど、デジタル作成が困難な場合や

機器が故障した場合には、例外的に書面で作成されることになります。


 このデジタル化により、公正証書遺言を作成するのにあたって、

用意する書類や持ち物に変化が生じました。

 以前は、印鑑証明書(正式には印鑑登録証明書)と実印を遺言者が

持って行くのが必須とされましたが、今後は例外時以外に実印を使うことは無く

本人確認のためには、官公署発行の顔写真付き身分証明書で済みます。

 もちろん、本人確認用の書類として、

3カ月以内に発行された印鑑証明書と実印を用意することは可能ですが、

マイナンバーカードまたは運転免許証を持って行くことで構いません。

 また、証人2名についても、例外時以外に、

はんこ(認印可能)を使うことは無くなります。


 また、公正証書遺言を作成する当日の手順は、次のようになります。

 まず、遺言者の本人確認がなされ、遺言者から公証人に対し、証人2名の前で、

遺言の内容を改めて口頭で告げる点は、以前と変わりありません。

 そして、公正証書遺言の案文を公証人が読み聞かせるか閲覧させるとき、

以前は文案を印刷した紙が渡されていましたが、

今後、公証人のパソコン画面に表示させて確認する方法も取られます。


 次が重要な変更点になりますが、電子データに署名押印をすることは

無理なので、遺言者本人と証人2名は「電子サイン」を行うことになります。

 公証人がパソコンに接続された署名用のペンタブレットを用意した後、

遺言者や証人はタブレットタッチペンで自分の氏名を記入して、

所定のボタンを押すことで、電子サインは完了します。

 銀行などの金融機関の窓口では、何年も前から実施されている方法で、

経験済みの方も多いかもしれません。なお、認証機関による本人認証と審査を経て

予め発行される「電子証明書」を用いる「電子署名」とは異なります。

 そして、公証人は日本政府認証局発行の官職証明書を使い電子署名を施します。


 こうして出来上がった公正証書遺言の原本は、電子データとしてPDF形式で、

日本公証人連合会が運営するシステムに保存されます。

 遺言者に対して、公正証書遺言の正本謄本が交付されるに当たり、

現状では、完成した電子データを紙に印刷して、公証人が認証文を付した書面

受け取ることになります。また、電子データを受け取る方法も可能ではあります。



 以上の説明は、公正証書遺言を作成する場合なのですが、

デジタル化は公正証書全般に及んでおり、遺言に限らず、

様々な契約書を公正証書で作成する場合にも当てはまります。

 下の画像は、日本公証人連合会がホームページに掲載するリーフレットで、

公正証書の作成手続のデジタル化を簡単に紹介しています。



 このリーフレットでは、インターネットによる嘱託や

ウェブ会議(リモート方式)の利用が導入されたことも紹介されています。

 金銭消費貸借契約や定期借地権設定契約などビジネスの目的で、

公正証書を作成する場合には、利用され始めているようです。


 しかし、遺言の作成や任意後見契約のように、本人の真意判断能力

重視される場合には、公証人が確実に本人の意思を確認するため、

公証人が遺言者と直接会って、対応や挙動を観察する必要性が高まります。

 さらには、親族などの同席により、遺言者が真意と異なる内容を

言わされることがないよう、その同席を確実に防ぐ必要がありますが、

リモート環境で完全に防ぐことは困難だと考えられる上、

ディープフェイクのような技術を使ったなりすましも懸念されます。


 そのため現状では、公証人が公正証書遺言の作成に当たって、

リモート方式やインターネットによる嘱託を認めないことが通常となります。

 むしろ、遺言者がまだ壮年世代で、仕事で公証役場へ本当に行けないなど、

例外的な場合に限定されると言えそうです。

 なお、リモート方式が認められる場合には、MicrosoftのTeams、

タッチペン、ウェブカメラの利用が可能なパソコンの準備が必要なため、

こうした機器の操作に慣れておくことも求められます。


 また、公正証書遺言の正本謄本デジタル形式で交付されても、

法務局の相続登記や銀行などの金融機関での相続手続きにおいて、

実際にはまだ使えず、書面の正本や謄本を要求されます。

 令和10年(2年後)頃までは、対応する予定も無いようなので、

デジタルの正本や謄本を活用するまでには、まだまだ年月がかかりそうです。


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