top of page

取決めが無くても、法定養育費を請求 ~令和8年4月以降の離婚~

執筆者の写真: 真本 就平
真本 就平
8月19日
読了時間: 5分

 当事務所では主に相続に関する業務を扱っており、

家族関係や金銭関係を無視して進めるわけにはいきません。

 離婚や養育費についても、家族と金銭が大いに関係するところ、

今年の春から始まった仕組みがありますので、簡単に紹介いたします。


 離婚をするとき、両親がともに未成年の子どもの親権者になる「共同親権」は、

今年の春に話題になりましたが、離婚時に養育費を取り決めていなくても、

一定額を請求できる「法定養育費」も、同じときに始まっています。


 こうした離婚関係の民法などの改正が国会で成立したのは、令和6年5月で、

新しい運用が始まったのは、令和8年4月1日でした。

この内容について、法務省がホームページで紹介しています。 → リンク



 養育費とは、子どもを育てるために必要なお金であり、

子どもと一緒に暮らしていない親も、負担する義務があります。

 そのため、両親が離婚した後は、子どもと一緒に暮らす親の側が、

もう一方の親に対して、養育費を請求することはできます。

 ただし、実際に養育費をいくら支払うよう求めるためには、

父母の協議や家庭裁判所の手続により、養育費の額を取り決める必要が、

これまではありました。


 しかし、令和8年4月1日以降に離婚が成立した父母で、条件を満たせば、

子ども1人につき、月額2万円を請求することができます。

 未請求だった過去の分、例えば、離婚から2年経った後に遡って2年分を

まとめて請求することも可能です。(5年の消滅時効には注意)


 条件は次のとおりで、どれも満たす必要があります。

・ 養育費について取決めをすることなく、協議離婚をした

・ 離婚の時から引き続き子の監護を主として行う父母の一方が、他方に請求

(「監護」とは、実際に子どもの世話をしていることを指します。)

・ 離婚の時から、子が18歳に達した日までが、対象期間

(大学生に相当する年齢は、対象外です。)


 もっとも、請求を受けた側の親が、次のどちらかを証明したときは、

法定養育費の全部又は一部の支払を拒むことができます。

・ 支払能力を欠くために、法定養育費の支払をすることができないこと

・ 法定養育費の支払をすることによって、自らの生活が著しく窮迫すること

 また、家庭裁判所は、支払能力を考慮して、

支払いの免除や猶予などを命じることができます。


 この法定養育費が月2万円となっているのは、率直なところ、

最低限度の生活の維持しかできないと感じられるでしょう。そもそも、

法定養育費は、あくまで暫定的補充的な制度だと位置づけられています。

 そこで、法定養育費を請求した後でも、

これまでどおり、父母の協議や家庭裁判所の手続きにより、

各自の収入などを踏まえた適正な額の養育費を取り決めることが重要になります。

 また、一度決まった養育費であっても、その後に事情の変更があった場合は、

養育費の額を変更することも、検討すべきとなります。



 取決めによる養育費でも、法定養育費でも、請求をしたところで、

相手方が応じなければ、子育てに必要なお金を手にすることができません。

 支払いを強制するには、裁判で勝訴するか、調停がまとまるか、

適切な条項を盛り込んだ公正証書を予め用意しておいてから、

裁判所の民事執行手続きで、預貯金などの財産を差し押さえる必要がありました。


 しかし、令和8年4月1日からは、「先取特権」(さきどりとっけん)と

呼ばれる優先権が、養育費の債権に認められるようになりました。

 これにより、養育費を取り決めた文書などを提出することで、

差押えの手続きを始められることができます。

 ただし、上限額が設定されており、子1人当たり月額8万円までが対象です。

また、令和8年4月1日以降に発生する養育費に限られています。



 さて、初めに述べた共同親権ですが、令和8年4月1日以降の離婚において、

未成年の子どもの親権者を父母双方にするのか、

これまでどおり父母の片方だけにするのか、選べるようになりました。

 家庭裁判所が親権者を決める場合、次の事情が認められるときは、

必ず単独親権の定めをすることとされています。

・ 虐待のおそれ

・ DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難である

・ 共同親権と定めることで子どもの利益を害する


 すでに離婚した場合でも、子どもの利益のため必要があると認めるときは、

子ども自身やその親族の請求で、家庭裁判所が親権者を変更することができます。

 変更後の状態に共同親権が加わることになり、令和8年3月以前

離婚した場合でも、単独親権から共同親権への変更が可能ではあります。



 最後に、今回の法律改正の対象ではありませんが、

離婚後の子ども(名字)や戸籍について、説明しておきます。

 時を遡って親が結婚したとき、夫婦別姓制度が無い現状では、

夫と妻のどちらの氏を名乗るかを婚姻届を記入します。

夫婦の戸籍が作成される際、氏を名乗った方が戸籍の筆頭者になります。

 そして、子が生まれると、出生届に基づき、夫婦の戸籍に記載されます。

 夫婦が離婚すると、夫婦のうち筆頭者でない方(氏を名乗らなかった方)が、

戸籍から離れて、結婚前の氏(名字)に戻ります。

 このとき、子どもは、筆頭者(氏を名乗った方)の戸籍に残ったままで、

も離婚前から変わりません


 こうなると、筆頭者じゃない方の親と子は、

その親が親権者になっている場合でも、氏も戸籍も異なってしまいます。

 そこで、「子の氏の変更」の手続きが用意されており、

子の氏が父又は母と異なる場合には、子は家庭裁判所許可を得て、

市区町村に所定の届出をすることで、その父又は母の名乗ることができます。

 家庭裁判所での手続きが早ければ、1日で完了することもありえます。

 この手続きにより、筆頭者じゃない親が移っていった先の戸籍に、

子も移ることができます。

 離婚で氏(名字)が戻った人は、離婚から3カ月以内に届出をすることで、

婚姻中の姓を名乗れますが、この場合も元夫婦の氏は別と考えることから、

さらに「子の氏の変更」をすることで、その子を自分の戸籍に入れられます。

 以上のとおり、氏(名字)や戸籍は、

親権や監護と自動的に連動するわけではありませんので、ご注意ください。


Sphere on Spiral Stairs

真本行政書士事務所

コスモスマーク_edited.png

​〒605-0953 京都市東山区今熊野南日吉町48番地の3

電話・FAX : 075-525-4567

Copyright © 真本行政書士事務所 All Rights Reserved.

bottom of page