特定人の不動産登記情報をすべて集める ~所有不動産記録証明制度~
- 真本 就平

- 3月25日
- 読了時間: 6分
身内の人が亡くなったとき、相続の手続きを進めるに当たり、
その人が多くの不動産を持っていると聞いたことはあるものの、
どこにどんな不動産があるか、資料が残っていないために、
調べようにも調べられなくて困り果てることが起こりえます。
また、かつて自分が不動産をいろいろと取得したものの、
実際は司法書士に任せっきりで、もらった書類も紛失してしまうと、
自分自身でもきちんと把握できなくなるかもしれません。
そこで、こうした場合などに不動産の情報を入手できるよう、
令和8年2月2日に「所有不動産記録証明制度」が始まりました。
法務省がこの制度についてホームページで説明しています。 → リンク
この制度のおおまかな仕組みとしては、
氏名と住所を特定した上で、法務局が全国の不動産登記の情報の中から、
所有権者としてどちらも合致しているものを抽出して、
その結果を一覧にして、証明書として交付するものになります。
この制度が導入された目的には、2年前に始まった相続登記の義務化に関し、
相続人が亡くなった人の不動産を把握しやすくすることで、
相続人の手続きの負担を軽減するするとともに、
登記漏れを防止することが挙げられています。
請求ができる人に関しては、プライバシー保護のため、
誰でも他人の情報を取れるようにはなっていません。
まず、所有権の登記名義人本人が対象で、これには法人も含みます。
加えて、名義人の相続人になれば、名義人の情報を請求することができます。
さらに、親権者や成年後見人だけでなく、
こうした人から委任を受けた代理人なら、親族や第三者でも請求ができます。
請求先は全国の法務局・地方法務局となり、どこでも対応が可能です。
窓口での対応も、郵送請求もでき、オンライン請求も用意されています。
手数料は、検索条件1件について、1通当たり、
書面請求で1,600円、
オンライン請求は、郵送交付が1,500円、窓口交付が1,470円です。
請求に当たって必ず要する書類は、印鑑証明書(書類に実印を押印)
もしくは、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類です。
過去の氏名や住所を検索条件とする場合、これらを証明するものとして、
戸籍謄本や住民票の写しなどが必要となります。
相続の場合は、登記名義人との相続関係を証明するものとして、
戸籍謄本や法定相続情報一覧図などが必要となります。
代理人として請求する場合、
必要事項が盛り込まれた委任状と委任者の印鑑証明書も必要です。
検索の結果は「所有不動産記録証明書」となり、
所有権者として登記に記載がある全国の不動産がまとめて掲載されます。
掲載される情報は、土地か建物か・所在地・地番・家屋番号(建物の場合)・
不動産番号です。共有の場合も掲載されます。
面積や抵当権の有無など詳細を知るには、この証明書の情報を基に、
通常の不動産登記簿(正式名称は登記事項証明書)を入手することになります。
請求から証明書を受け取るまでにかかる日数は、即日発行とはならず、
各地の法務局によって異なるため、請求をした窓口にお問い合わせください。
下の画像は、法務省がホームページで紹介されている見本になります。

この制度による検索は、氏名と住所の両方が一致していないと、
証明書には上がってきません。
引越しで住所が変わったり、結婚や養子縁組などで氏(名)が変わった場合、
現在の氏名と住所で検索しても、自動では過去の情報が上がってこず、
過去の登記に記載されたとおりの氏名と住所で検索をかけなければなりません。
そのため、こうした人に係る情報をすべて入手するには、
過去の氏名と住所の組み合わせについて、別個の検索条件とし、
請求書にすべて記入する必要があります。
検索条件が複数となるので、手数料もその分かかります。
これ以外にも、同一人物が所有するのに、不動産によって異なる漢字で
登記がなされていることがあります。「辺」に「邊」や「邉」があるように、
読みが同じでも字形が異なる「異体字」が存在すると、
手書きが使われた時代の登記では、ばらばらなことがままあります。
1つの検索条件で複数の異体字を拾い上げられるかどうかは、
異体字によって異なるため、複数の漢字で検索しておくことが考えらえます。
このほかにも、検索における抽出の条件が細かく定められてはいるので、
該当する場合は、請求に当たって個別に検討することになります。
注意点として、土地や建物の表示に関する登記のみの不動産は、
検索対象となりません。また、諸事情により電子化されず現在も紙のまま
管理されている登記簿も存在しており、これも検索対象とはなりません。
さて、これまで不動産を見つけ出す方法としては、各市区町村に対して、
固定資産税における管理のために使われる「名寄帳」(なよせちょう)を
発行してもらう方法が使われてきました。
この難点は、それぞれの市区町村から入手する必要があり、
全国各地に不動産を所有する場合、結構な手間がかかります。
この点は、法務局の所有不動産記録証明制度を使えば、
全国の不動産を一度に入手することができます。
では、所有不動産記録証明書だけで済むかと言うと、そうとは限りません。
この制度は、あくまで所有権が登記済みの不動産が対象になります。
古い建物だと、登記がされずに固定資産税だけ課されていることも、
散見されます。こうした未登記建物は、名寄帳で把握する必要があります。
さらには、不動産には土地でも建物でも価値が低いため、
固定資産税が非課税になっていることがあります。
市町村によっては、納税通知書や課税明細書だけでなく、
名寄帳にも非課税物件が記載されないことがあるので、注意が必要です。
山林や私道などの土地は、登記を基に把握できる場合が増えそうですが、
登記も無い古くて小さな建物となると、
現地を調査してようやく存在がわかることもあります。
そもそも、この所有不動産記録証明制度自体、
過去の氏名や住所のままの登記の情報を逃す危険があります。
また、こうした過去の情報や相続について請求する場合には、
添付書類を適切に用意しないと、証明書が交付されないため、
煩雑さのせいで不明なままにしてしまうおそれもあります。
そのため、相続などにおいて、所有不動産をきっちりと把握するには、
所有不動産記録証明制度は大変に有用な手段ですが、
状況に応じて、名寄帳や現地調査などと組み合わせ、
丁寧に調査を進める必要があると考えます。
相続や不動産の専門家に依頼するのも、選択肢になるでしょう。